開幕戦の対戦相手である王者川崎がゼロックスを戦ったので、素人なりにスカウティングしてみました。
こんなブログを始めた身としては、開幕戦の相手が先にオープニングマッチを戦ってくれるのはありがたいですね。
試合は、川崎が2点差を追いつかれるものの、小林選手の終了間際の劇的ゴールで勝ち切るという展開。
こういう選手が後半途中から出てきて仕事ができるのは、やはり強いし怖いですね。
川崎の強さを再確認したからこそ、開幕戦がより一層楽しみになりました。
<両チームのスタメンから予想したこと>

ガンバの配置が読めなかったので、ネットでガンバサポーターの方々の見解を参考にさせていただきましたが、結果的に当たっていました。さすがですね。
驚きだったのはガンバ大阪が右SBに小野瀬選手を起用したことですね。
おそらく三笘選手対策ということではないかと思いますが、不慣れなポジションではあるのでこのポジションは川崎としては狙い目になるかもしれません。
試合展開としては、川崎がボールを保持して、ガンバが後方に4-5-1のブロック、もしくはIHを上げて4-4-2のブロックを作るというものにはなるでしょう。
その際の噛み合わせとしては4-5-1ブロックならCB(と4-5-1の重心次第ではシミッチ選手)が浮きやすく、4-4-2ブロックならシミッチ選手が浮きやすいかと思いますが、新加入のシミッチ選手がどの程度フィットしているかが気になるところです。
<簡単に試合展開の確認>
試合開始からガンバ大阪がハイプレスで川崎の攻撃に挑んできたのは予想外でしたが効果的でしたね。
試合開始の落ち着かない中での奇襲としては十分で、良い位置でショートカウンターになる場面もありました。
山根選手がサイドでボールを持つと勢いよくアプローチしており、逆に山根選手も裏に抜ける家長選手に通すなど見応えのある攻防が見られました。
前半途中からは、やはり川崎がボールを持つ展開になり、ガンバは4-5-1でブロックを作っていました。
前半に川崎が左サイドを起点に2ゴールをあげ前半は2-0。
後半開始直後も川崎ペースでしたが、徐々にガンバのペースになり、2点差を追いつきます。
積極的にボールを繋ぐ姿勢が流れを呼び込んだように感じました。
そこからは一進一退の展開が続きましたが、最後はラストプレーで田中→遠野→小林と縦に早い攻撃で決勝点。
このシーンは田中選手の鋭い縦パス、遠野選手のターンと判断の早いスルーパス、小林選手の引き出し方、そしてファーへのシュートと好プレーが詰まっていました。
<川崎の攻撃>
ガンバ大阪の4-5-1に対して、川崎は比較的両CBがフリーでボールを持てます。
その割にアンカーのシミッチ選手のポジション取りが若干後ろに重いかなという印象は受けました(きっと過度なリスクは取らず、ブロックの外からパスを入れていくということかと思います)。
ただ、シミッチ選手の散らしと鋭い縦パスは早くも川崎の選手っぽくなっていて、彼の入れたくさびが2点目に繋がりました。
そして、何よりも左利きであることが大きいです。
というのも、左WGの三笘選手と左利きのアンカーというのはあまりにも相性が良いです。凶悪です。
川崎がこれを意図して彼を獲得したのなら恐ろしいですね・・・笑
川崎は相手ディフェンスラインに穴ができたら誰かが侵入するというのは自動化されていそうなので、対戦相手としては穴ができたら埋めるのはもちろん、そこにはできるだけボールを出させないのが吉です(1点目も右CBと右SBが釣り出されたスペースを利用していましたね)。
シミッチ選手がボールを持ったときには、多少シミッチ選手の右前に運ばれるリスクを負っても、彼の左を切って右に誘導した方が良さそう。
それによって、家長選手や山根選手にシミッチ選手からズバッとパスを出されるのはトレードオフの関係として引き受けた方が良いでしょう。

(すみません、ごちゃごちゃしますね苦笑 次回からは選手の表記を小さくしてみようかな。)
降りていく三笘選手に三浦選手がついていき、空いたスペースに旗手選手が走る(三笘選手も反転して、そこに走る姿勢を見せました)。
この場面、シミッチ選手はタッチラインに体を向けた状態から浮き球でこのスペースにボールを置いているんですよね。右利きなら田中選手へパスorバックパスだろうに・・・。

少し簡易的に表現しましたが、菅沼選手が釣り出されたスペースに脇坂選手が走り藤春選手と三浦選手を引きつける、そして家長選手へと展開し容易に前進に成功。

12分40秒、このように藤春選手の背後のスペースにダミアン選手が流れ菅沼選手を中央から追い出し、ボールは中につけるという形もありました。
できたディフェンスラインの穴に誰かを走らせたいなら4-3-3というシステムは効果的なんだというお手本ですね。
言うまでもないことですが、25分50秒の脇坂選手など、川崎はチームとして2ライン間で誰かが受け手になる意図はかなり見えますし、2列目の間が少し開けば狙ってきます。
また、ハイプレスを受けてルーズな形で蹴ることがあってもダミアン選手がボールを受けられるのでそれはかなり大きいですね。
攻撃の仕組みとして何もかもがよく計算されているなという印象でした。
<川崎の守備>
川崎はあくまでも4-3-3で守っていました。できるだけ4-5-1にはならないようにしていますね。
それでも流れの中で大きく崩された場面はあまりありませんでした。
マリノスにとって最もチャンスになりそうなのは、川崎にとってのネガティブトランジション、特に不用意にボールを失った場面やガチャガチャとした状態からボールを失った場面です。
どうしても川崎は(守備も素晴らしいのですが)攻撃のDNAが強いチームなので、「どちらがボールを保持する?」という瞬間には攻撃寄りのポジションになっている印象で、そこからのショートカウンターには多少の隙が見えました。
56分55秒のルーズボールからのトランジション、「ジェジエウVS藤春」はスピードの差もありかなり際どい場面になりました。
パトリック選手のパスがあと少し長ければ決定的なチャンスになったと思いますが、パスも悪くはなかったですしジェジエウ選手の守備を褒めるべきですね。
この場面は川崎の対応がまずかったわけではありませんが、こういうトランジションでのトラブルは狙っていきたいです。
終了間際の井手口選手からフリーで抜ける前方の選手にスルーパスが出なかったシーンも川崎としてはホッとした場面かと思います。中村憲剛さんも思わず「よかった」と漏らしていました笑
次に図を使って、48分25秒の場面について触れます。川崎の失い方がまずかった場面ですね。

前に出てルーズボールを処理した谷口選手のスライディングパスが、井手口選手にカットされた瞬間です。
ガンバ大阪は右WG(SH)がここは縦に抜けて欲しいのですが、矢島選手はその場にステイしてしまい大きなチャンスにはなりませんでした(それでも矢島選手は難しい役割の中で1点差に迫るゴールを決めましたし、縦にあまり抜けられないデメリットを承知の上で宮本監督は起用しているわけで、矢島選手が責められるものではありません)。
ここで谷口選手の空けた最終ラインのスペースに対し、シミッチ選手が迅速なカバーリングを見せ、旗手選手のカバーリングは少しだけ遅れています(もしくは、旗手選手は矢島選手の走力や特性を考えて、足もとで受ける矢島選手へのアプローチを考えたのかもしれません)。
このシーンは、マリノスならば仲川選手が裏に抜けてチャンスになる十分なスペースがあったかと思います。
一試合を通してシミッチ選手はSBの空けたスペースを埋める仕事も迅速にこなし続けており、シミッチ選手の危機察知能力の高さはかなりのものだと感じましたね。
この場面では「シミッチ選手のカバーよりも先に縦に抜けられるなら縦へ」「シミッチ選手のカバーが間に合ってしまうなら彼がいなくなるスペースを利用して倉田選手へ」が最善の選択になりそうですが、これは難易度が高い判断になります。
ただ大切なことは、「シミッチ選手の危機察知能力を逆手に取る=シミッチ選手がいなくなる場所を活用する選択肢をチームとして持っておくこと」だと思います。
川崎がブロックを作った場合についても考えましょう。

このように、シミッチ選手がサイドにカバーに出た際には田中選手と脇坂選手の2枚がボールサイド寄りのバイタルを埋める形になりますが、脇坂選手の外側のスペースで川崎選手がフリーになっています。
一方で、家長選手は藤春選手に意識が集中しているのでこのスペースは埋めていません。
マリノスで想像すると右から仲川選手がカットインして、このスペースへ流し最後はティーラトン選手のミドルになるでしょうか。
また、川崎にとって構造上の問題が起きうるとしたら、右SB山根選手の背後ですね。

藤春選手と川崎選手のワンツーで山根選手の背後に抜け出したシーンです。
この場面で山根選手の背後をカバーする選手はおらず、家長選手も藤春選手についていきませんでした。

ルーズボールを拾った矢島選手が左へと素早く展開し、受けた川崎選手を追い越すように藤春選手がオーバーラップします。
川崎選手は藤春選手を使わずカットインしてシュート、谷口選手が頭でクリアしましたが、この場面はフロンターレにとって少し危険なシチュエーションでした。
バイタルを埋めに走ったシミッチ選手、田中選手共に川崎選手のカットインについていけなかったのは、山根選手の背後を気にした結果のようにも見えました。
深夜のバイトじゃありませんが、「山根ワンオペ問題」はうまく狙っていきたいですね。
逆に、左SB旗手選手の背後は、そもそも谷口選手とシミッチ選手がカバーしていてあまりそういうシーンが見られませんでした。
彼は本職SBではないので、チームとして気をつかってケアしているのかもしれません。
川崎のハイプレスについても触れておきましょう。
前線が前にプレスをかけた際に、中盤はカバーシャドウを行う、つまり相手選手を背中で消していました。

菅沼選手の横パスを三浦選手が受けたシーンです。見事に各選手が相手を背中で消しています。
最終的には降りてきた矢島選手へとうまく逃がしましたが、これだとなかなかパスは出せないですし、仮にボールをカットしたら相手を置き去りにして攻撃に転じることができます。嫌らしい守備ですね。
ロングボールをFWに当てるという手もあるのですが、谷口・ジェジエウコンビは空中戦も強いですからね。
パトリック選手のいるガンバ大阪ならそれもありだったと思いますが、マリノスの前線はそういうキャラクターではありませんから。
ガンバの中盤は、前半は背中で消されっぱなしで受ける動きが少なくリズムが出ませんでしたが、後半は修正されリズムを取り戻しました。
ちなみに、ハイプレスを掻い潜る山本選手を経由した展開からガンバのPKに繋がっています。

<マリノスはどう戦うか>
キクマリで天野選手が「まだ自動化できていない」と言っていたように完成度が心配ではありますが、4-2-3-1より3-4-3の方が良さそうです。
その理由は、第一に守備の面ですね。
①川崎は釣り出したディフェンスラインの穴に必ず誰かが侵入する。それを埋めるために守備側が絞ると大きく空いたサイドに展開できる。
②シミッチ選手から三笘選手へのラインを切るため大きく右(マリノスにとって左)に展開されることは受け入れる必要があるが、最終ライン脇で家長選手&山根選手に大きなスペースは与えたくない(この試合だと5分50秒の三笘選手のシュートがサイドネットへというシーンに繋がりました)。
上記2点から、最終ラインが5枚の方が安心です。
ガンバがSB裏をやられたというだけではなく、シミッチ選手の若干後ろに重いポジション取りだと中央はそこまで簡単には崩されないだろうというのと、脇坂選手が思ったよりはライン間で受けても決定的な仕事をしていなかったことが理由です。
怖いのは、ダミアン選手に当ててIHが絡みWGが裏に抜ける展開ですね。
ただ、後方に5枚いると一人が前に出てダミアン選手に思い切って当たることもできますし、背後のスペースもまだ4人残っているので簡単には穴は開かないのではないかと。
あとはフリーマン的に家長選手が中に入ってくるのも気をつけたいですが、その場合はある程度ボールを持たれるのは仕方ないかもしれません。
5-4-1のブロックならば4の横の距離感は気をつけてしっかり埋めたいですね。
川崎は少しの隙間があれば縦パスを通してくるので(特に田中選手が怖いくらいバンバン通してきます)。
間が開いたフリしてカットするということもできれば良いですね。
また、シミッチ選手、谷口選手と決定的なヘディングを放っていたコーナーキックは要注意ですね。
途中出場の橘田選手も気になりました。小気味よくドリブルを交えつつパスワークに絡んでいける選手に見えました。
攻撃についても触れていきましょう。
攻撃面でも、川崎のハイプレスをいなす策として3-4-3は有効だと思います。

まず前提として、ハイプレス時には3バックに3トップをぶつけてくるでしょうから、GKはキックの精度が高い高丘選手(1)が良いと思います。
右WBが開くことで田中選手がついていくならマルコス選手(10)か扇原選手(6)が顔を出して受ける。
ついていかないなら和田選手(33)を経由して仲川選手(23)へ。
また、崩しの局面では「山根ワンオペ問題」実現のために、ティーラトン選手(5)が裏に抜け出すのが効果的でしょう。
この場合は脇坂選手がついてくる可能性もありますが、マルコス選手(10)が飛び出してシミッチ選手がついてくるよりは良さそうです。
ただ、マリノスとしてはエウベル選手(7)が出られないのが残念ですね。
この試合に関しては右利きの選手が左WGをした方がいいと思いますが、おそらく高野選手(16)の起用になるのではないでしょうか。
さすがに樺山選手(35)がいきなりスタメンということは無いかなと。でも、ジョーカーとして期待しています。
<最後に>
川崎フロンターレをこうやって戦術的な目で観てみたのは初めてですが、ユニットとして各所がよく機能していますよね。
そりゃ強いわ。
でも勝てる可能性は十分あると思います。
期待して応援しましょう!
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