【レビュー】2021明治安田生命J1リーグ第13節、横浜F・マリノス VS ヴィッセル神戸

分析

神戸との上位対決を制し、4連勝!

好調な相手でやはり難しい試合になりましたが、結果的にはクリーンシートでの勝利!!

これは今後に向けても大いに自信になりますね。

この時期にしては異様な暑さの中、選手たちは本当によく戦ってくれました。

チアゴ選手(13)が足をつってるのなんて初めて見た気もしますが、あの暑さで古橋選手との勝負はきついですよね。

急遽スクランブルでの投入となった天野選手(14)も素晴らしい活躍でした。

先制点に繋がった虹をかけるサイドチェンジを祝うように、ハーフタイムには散水で虹がかかっていましたね。

そして、インタビュアーの方の「誰よりも早く跳ね返りに反応していたのがポイントでしたね」に対する「欲しかったんで(笑顔)」がかわいかったです笑

マルコス選手(10)の怪我も大したことはないようなので、一安心ですね。

高丘選手(1)の安定感も素晴らしかったです。

前半のビッグセーブが無ければ、どうなっていたことかー。

仮にあれが決まっていたら後半のイニエスタ→古橋の決定機もきっと決まっていたんじゃないかと思います。

また、喜田選手(8)を中心にポジティブな声がよく出ていて、「このチームはいいな」とあらためて感じました。

他のチームの試合では、「かわいそうだな」と思うほどの罵声に近いコーチングも聞こえたりするので。

私が事前におこなったスカウティングは、当たっていたものもあればそうでないものもありました。

うーん、日々反省ですね。

(試合中にツイートした「前川はビルドアップうまくやってるけど、どこかで一回ミスしてくれる予感はある笑」は当たっていたんですけどね笑)

古橋選手はどちらかと言うとチアゴ選手側で勝負していましたし、菊池選手があんなにスピード勝負に強いと思いませんでした。

菊池選手に関しては、鹿島戦で「エウベルなら勝てるな」と思わせるシーンもあったのですが・・・失礼しました、凄みのあるCBですね。

ビルドアップ技術を高めて海外に行ってほしい選手ですね(日本人が空中戦で吠えながら海外の選手と戦うのを見てみたい笑)。

「戦術古橋」と言っても差し支えない能力を持つ古橋選手はやはり凄かった。

彼の高校の後輩がマリノスにはたくさんいるので、たくさん刺激になったのではないかと思います。

今回の記事は、ビルドアップで苦労した前半に、状況を変えようと頭をフル回転していた松原選手(27)に注目してみます。

<相手を見極めて揺さぶり続ける日本代表SB>

前半のマリノスのビルドアップを時系列で振り返りつつ話を進めていきます。

立ち上がりは良い試合の入りをしたと思います。

4分21秒のシーンからです。

チアゴ選手がボールを持ち、相手の2ライン間に喜田選手とマルコス選手が侵入します。

そんな二人をカバーシャドウ(相手を背中で消すこと)で消す相手の2列目に対して、エウベル選手(7)が颯爽と現れます。

カバーシャドウにはレイオフ(前を向いている味方にボールを落として前向きにプレーさせること)が効果的と言われますが、まさにその形でエウベル選手がマルコス選手に落とし、スルーパス。

残念ながらボールは長くなりましたが、素晴らしい崩しでした。

チアゴ選手がボールを持ちドリブルで運びます。

この際、喜田選手は最終ラインからいなくなるチアゴ選手の代わりにお留守番で、人を配置しておきたいエリア(上図の青い四角形)は不在です。

このエリアに人がいないとボールを逆サイドに散らすことができないので、狭いスペースを突破するほかありません。

ただ、青いエリアでボールを受けて山口蛍選手に刈り取られてしまうと一気にピンチになるので、まずはそれを避けたとも考えられます。

松原選手とのワンツーでボールを受けたチアゴ選手から、マルコス→エウベルとボールが繋がり局面を打開します。

その後のパスが乱れましたが、山口選手に奪われるリスクを除外しつつ前進できたのは良いビルドアップだったと言えるでしょう。

高丘選手がボールを持ち、この後チアゴ選手にボールが渡ります。

状況を見てみると、今度は山口選手の前に松原選手がポジショニングを取っています。

本記事の主役、松原選手の登場ですね。

山口選手に奪われるリスクを覚悟でボールを受けようとしたのかというとー。

チアゴ選手が運ぶと同時にエウベル選手が縦に抜け、空いたスペースに登場するマルコス選手。

松原選手の役目は”山口選手をその位置にピン留め”してマルコス選手にボールを受けさせることです。

こうやって見ると全体がロジカルに連動していますよね(すごい)。

これで悠々とビルドアップに成功・・・

・・・のはずが、最終ラインから飛び出してきたフェルマーレン選手に止められてしまいます。

やはり世界を知るCBは相手の狙いを瞬時に察知しますね。

「完璧に上手くいっていたのに止められてしまった」

この心理的影響はマリノスにとって大きかったのではないかと思います。

先ほどのプレーがあったからなのか、松原選手、ティーラトン選手(5)の両方が中央に位置することが出てきます。

外寄りのビルドアップだけだと、中央に脅威が与えられず、思い切ってフェルマーレン選手が最終ラインから飛び出すことができてしまう。

なので、「中央を攻略するよ。ちゃんと最終ラインにいないとヤバいよ」というポジショニングをしているのかもしれません。

12分53秒から、松原選手も絡みつつ見事に中央を攻略しますが、喜田選手のティーラトン選手へのパスはわずかに長くタッチを割ります。

図は割愛しますが、14分04秒には松原選手が酒井選手の裏を目掛けてロングボールを送り、「前に出て相手を潰すぞ」という神戸の最終ラインを牽制するも、跳ね返されてしまいます。

もしもこれが通っていればその後の展開はもっと楽になったのかもしれませんが、一筋縄ではいかない相手の守備ブロックに対して変化をつけたビルドアップを見せるというのは大切なことだと思います。

古橋選手の決定機の後のシーンです。

高丘選手からボールを受けた松原選手は「中坂がいないうちに」と手薄になっている右前方にボールを送ります。

このあたりで余分に時間をかけないあたりは彼のビルドアップIQの高さですよね。

ボールを受けたエウベル選手は、縦に抜けるマルコス選手にパスを送ろうとしますが、フェルマーレン選手がブロック。

エウベル選手のパスは相手の脇を抜ける素晴らしい軌道だったのですが、そこで彼の足が出てくるんですよね。

ぐぬぬ、とことん邪魔な選手だ(褒め言葉)。

タッチライン沿いでボールを受けた松原選手は相手にとってわかりやすいビルドアップは避け、難しい体勢からアウトサイドで扇原選手に送ります。

ボールは少し短く扇原選手が相手を倒しファールに。

安易に外ではなく、なんとか中を使いたい意思が見えますね。

チアゴ選手がボールを持ち、松原選手はタッチライン沿いにポジショニングを取ります。

エウベル選手と同じ大外のレーンに入っていますが、酒井・中坂両選手を二人でピン留めすることで、チアゴ選手が安心して前に持ち出せるようにしているんだと思います。

サンペール選手の背後からひょいとライン間に現れた天野選手にチアゴ選手が鋭い縦パスを送りますが、少しだけボールは長くなります。

21分54秒、図は割愛しますが、天野選手が浮き球のパスを相手の最終ライン裏に送り、前田選手がダイレクトボレー。

松原選手だけでなく、この試合で大車輪の活躍だった天野選手も菊池・フェルマーレン両選手に「前に出てくるなら一発で仕留めるぞ」と強い意思表示ですね。

松原選手が相手ボランチ脇に登場する天野選手にボールを送るも少し長くなります。

図はありませんがこのあたりからいくつか、松原選手はできるだけ大きい展開をしようとします。

28分04秒:松原選手のスローインは遠くにいる畠中選手へ。

34分16秒:松原選手がエウベル選手を裏に走らせるロングボール。

34分42秒:松原選手がロングボールを前方に送ろうとする。

できるだけ大きな展開を多用して、「相手に狙い所を定めさせない」「相手のブロックを縦横に広げる」という意図だと思います。

たくさんの駆け引きで状況を打開しようとした前半ですが、菊池選手からオナイウ選手と前田選手でボールを奪った決定的なシーンから、一気にマリノスの流れになります。

神戸側もあのピンチを機に、心理的な影響もあり後ろ重心になったように見えました。

ここから、神戸陣内でボールを奪えたりファールをもらったりする機会が増え、神戸を自陣に押し込めることができ優位な展開に。

ここでは、エウベル選手と天野選手の連携で、天野選手が狭いところを抜けて右足でクロス、オナイウ選手の決定的なチャンスに繋がります。

直後には中坂選手の背後でボールを受けた天野選手をきっかけに、天野→喜田→エウベル(ヘッド)→天野と右サイドを攻略しています。

そしていよいよ先制点のシーンです。

この場面ですが、ここまでに数回続いた中坂選手の背後からサイドを崩したシーンが伏線となっていて、中坂選手の背後でボールを受けようと開く喜田選手に、たまらず山口選手がついていきます。

天野選手はそんな二人と入れ違うように中央へ。

松原選手はより状況の良い天野選手を選択し「ターン」とコーチング。

コーチング通り前を向いた天野選手は一気にサイドチェンジ。

ティーラトン選手の全力疾走からの好クロスが、フェルマーレン選手のオウンゴールを誘発し、遂に欲しかった先制点!!。

サイドを変えたり相手の裏に蹴っ飛ばすなど、大きく展開を変えようと松原選手が手を替え品を替え相手を揺さぶり続けた前半戦。

ロングフィードを蹴った主語は違えど、最も大きく展開を変えた場面が得点に繋がったというのは象徴的ですね。

こうやって振り返ると、松原選手がビルドアップでいかに頭を使って多彩なボールを繰り出しているかが見て取れると思います。

<サンペールを襲い続けたチーム得点王>

派手な活躍をした選手がこの試合は多かったですが、地味な活躍をした選手(褒め言葉です)として、オナイウ選手の守備にも少し触れておきたいです。

菊池選手へのプレッシャーが決定機を生み流れを引き寄せましたし、何よりもサンペール選手がボールを持った際のプレスバックはチームを非常に助けました。

サンペール選手が気持ちよくプレーできていたら、もっと古橋選手に決定的なボールが送られていたはずです。

サンペール選手は「本人が足の痛みを訴えて(三浦監督談)」前半のみで交代となりましたが、失礼ながら本当は大して痛めていないのではないかと思ってしまいました。

アイシングこそしていたものの、気持ちよくプレーさせてもらえない上に異様な暑さの中で先制点まで奪われてやる気を無くしてしまったのかもしれないと。

サンペール選手がそういう選手かはわかりませんが、負傷交代する割にはアディショナルタイムまで元気にプレーをしていたので。

まあ、ハーフタイムでアドレナリンが切れて痛みが出たということもありますし、あくまでも邪推です。

サンペール選手のプレーは美しいので次節以降も問題なく見られたらいいなという気持ちと、オナイウ選手のそんな影の貢献がこの試合には隠れていたのかもしれない、というちょっとした戯言でした。

<鬼門カシマを攻略して5連勝だ!>

次節は監督交代以降、好調な鹿島アントラーズですね。

しかも鬼門の県立カシマサッカースタジアム。

怪我をしていた天敵上田選手も予定より早く帰ってきていきなりゴールをあげています。

ただ、今年はセレッソにも勝ちましたし、嫌なジンクスは覆せるシーズンだと信じたいですね。

それに鹿島は週中にリーグ戦があるので、日程面ではこちらが有利です。

必ず勝って首位を猛追しましょう!!

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